シャドーバンキング解体新書中国の不動産バブルの原因となっている、謎の金融システムの実体

シャドーバンキング問題で人民元が切り下げられる?

シャドーバンキング問題、即ち不動産バブルの進行は、中国政府にとっては最も懸念している材料です。不動産バブルが崩壊すれば、中国経済に極めて大きな悪影響を及ぼします。中国にとっては、リーマンショックやギリシャ危機をも上回る、巨大な経済のブレーキが掛かるはずです。

従って中国政府は、絶対に不動産バブルを破裂させないよう、ソフトランディングさせることに躍起です。それが難しいとなれば、不動産バブルが弾けても、他の部分で経済成長を補える秘策が必要となります。

そこで浮上してくるのが、人民元の切り下げの可能性です。人民元は2005年6月より、段階的に切り上げていく事が発表されています。当時、1ドル=8.28元だった為替レートは、2013年7月現在は1ドル=6.1元台まで切り上がっています。

しかしこれでも、中国経済の実態よりも遙かに割安にコントロールされていると言われています。人民元の実勢レートからの乖離は、IMFの推計で20%、世界銀行の推計では70%と、幅はあるものの「割安すぎる」という認識では、どの国際機関でも一致した見解です。また、購買力平価から見た為替レートでは、人民元は35〜42%の割安(※参考)と計算されます。

このため、世界中のアナリスト・投資家のほとんどが「人民元は切り上がっていくものだ」と、無条件に考えがちです。しかし、中国政府がシャドーバンキング問題の穴埋めとして、輸出産業の促進を図ろうと考えれば、人民元を切り下げようとする動機としては、十分なはずです。切り下げにより、元安ドル高の為替レートが進めば、輸出産業の国際競争力が高まり、輸出主導での経済成長が促進できます。中国のGDPに占める純輸出は、2007年で9.4%、2008年で8%もありましたが、10年は約4%と低下傾向です。元安による輸出産業の援助は、最も手っ取り早い経済浮揚政策なのです。

当然、欧米各国は元の切り下げなど容認しないでしょうが、何せ中国は核を保有している唯我独尊の国家です。政府さえその気になれば、外圧など無視して元の切り下げを断行する事は、十分可能です。アメリカや日本は、TPPで中国包囲網を敷く事を目論んでいますが、これは諸刃の剣です。貿易で中国を孤立させれば、かえって元の切り下げに踏み切るきっかけを与える事になりかねません。

中国の持つ外交の切り札〜米国債の売却

そしてもう一つ、中国が持つ切り札が米国債の売却です。中国は2013年現在、およそ1.3兆ドル(130兆円)規模の米国債を保有している、あるいはそれ以上の金額だという説もあります(※注)。これを売却する事を脅しに、人民元の切り下げ容認をアメリカに迫る訳です。

もし中国が大量の米国債を売却に走れば、国際価格が暴落=長期金利が急騰し、米国経済に大きな悪影響を及ぼします。最大の保有者である中国が売ると分かれば、ヘッジファンドなどが追随して米国債売りの投機を行うので、債券市場は売り一辺倒の相場になることは必至です。財政赤字が深刻なアメリカ政府にとって、国債暴落による金利急騰は絶対に避けたい事態です。よって、中国が「人民元の切り下げ」と「米国債の売却」のどちらかを外交で迫れば、アメリカは人民元の切り下げを容認せざるを得ないのです。

よって当サイトでは、シャドーバンキング問題をきっかけとして、中国政府が人民元の切り下げに走る可能性は、かなり高いと予測しています。中国政府さえその気になれば、誰も切り下げを阻めない情勢なのです。

※参考人民元の適正為替レートは幾らか?〜2011年度時点で、相対的購買力平価で35%、絶対的購買力平価で42%の割安(海外投資データバンク)。

※注;実は正確な保有高は把握されていません。アメリカのバーナンキFRB議長は2011年に、実際の中国の米国債保有額は更に大きく、2兆ドル規模だと議会証言の中で述べています。中国の外貨準備高が3兆ドル以上である事から、バーナンキ説の可能性もありえます。なお、米国債の発行残高はおよそ9兆ドルです。

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